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「いや、おかしいだろ」──駅で目の当たりにした正常性バイアス

nagaoka.mmk

「正常性バイアス」という言葉をご存じでしょうか。

人が予期せぬ出来事や危険な状況に直面したとき、それを「大したことはない」「いつも通りだ」と無意識に判断し、危険を過小評価してしまう心理のことで、防災士や防火管理者の講習などでも学びます。

危機に直面してパニックにならない効果もありますが、本当の危険を評価できず気が付いた時には手遅れになっている危うさもあります。

今日、私はその正常性バイアスを、まさに目の前で目撃しました。

それは早朝、自宅最寄りの駅での出来事です。

いつもの駅、いつもの朝

その日は、いつも通り自宅最寄り駅から特急電車で通勤する朝でした。

私が利用するのは、快速や特急が停車する比較的大きな駅です。

この駅には少し特徴があります。

始発駅から都心に向けて乗客を乗せてきた列車に、この駅で新たな車両を連結して運行する「増結」が毎日行われているのです。つまり、後から連結される車両に乗る人にとっては、この駅が事実上の始発駅になります。

もちろん、この増結作業は毎日のように行われています。作業は職人技ともいわれるほど正確で、しかも日本の鉄道は「時間どおりに走るのが当たり前」。

だから乗客は誰一人として、「何か異常があるかもしれない」とは考えません。

いつもと同じようにホームへ入り、いつもと同じようにドアが開き、いつもと同じように列車へ乗り込んでいきます。

そして、その「いつも通り」が、これから起きる異常に誰も気づけなかった理由の一つだったのかもしれません。

最初の違和感

発車予定時刻まで1~2分程度あったので、増結された後方の車両に乗り込もうとホームを歩いていると、一足先に乗ろうとした初老の男性がドアの前で少し躊躇するようなそぶりを見せていました。

その時は小さな違和感だったので、「なんだろう?」と思う程度でしたが、比較的が外国の人も乗っている路線なので、そんな理由かな?と思いつつ足を止めず、その男性追い越してさらに後方の車両に乗り込みました。

車内はさほど混雑していませんでしたが、椅子はすべて埋まりドア付近に数人の乗客が立っていました。

ドア付近に立つと出入りする人の邪魔になるので奥に入ろうとした瞬間・・・

私は信じられないものを目にします。

私の目に飛び込んできた信じられないものとは?

※実際の画像を元に生成AIでイラスト化した画像です

乗り込んだドアの反対側のドアが開いています。

駅によっては、終点駅で乗降客を振り分ける関係からどちらのドアからも乗降りできたりしますが、私の最寄り駅はそうではありません。

ドアの向こうは1m以上の落差のある地面です。しかも反対行きの線路が敷かれており、タイミングによっては目の前を列車が通過します。

つまり、何かの拍子に転落すれば命に関わる危険な状況です。

しかし、周囲の乗客は誰一人として慌てていません。

スマホを見ている人。

ぼんやり立っている人。

誰も騒ぐ様子はありませんでした。

もちろん、本当に気付いていなかった人もいたでしょう。

気付いていても「駅員が把握しているはず」「そのうち閉まるだろう」と考えた人もいたかもしれません。

もちろん、実際に一人ひとりの心理は分かりません。

それでも、その場には「いつも通り」が流れ続けていて、今にもそのまま発車してしまうのではないかとさえ感じられました。

感覚的には5秒、実質1秒程度固まってしまった僕は、その場で思わず割と大きめな声でつぶやきました。

「いや、おかしいだろ」

つぶやきが耳に届いた車内の数人と目があった気がします。

中年男性、駅のホームで全力で叫ぶ!

次の瞬間。僕は乗ってきた側のドアから半身を出して叫びました。

「駅員さーん!!」

「ドア!ドア!反対側のドアが開いてる!!!」

伝わらなければ非常停止ボタンか?と頭をよぎりましたが、幸いにして数十メートル先にいた駅員さんが反応してくれて状況把握。

車内放送の後にドアは閉まり、列車は10分ほど遅れて出発しました。

「誰かがやるだろう」の"誰か"になること

今思えば、大勢の前で大声を出すのは少し恥ずかしいことだったかもしれません。

私が叫ばなくても、誰かが駅員さんに伝えたかもしれません。

あるいは、自分だけ危険な車両から降りるという選択もできたでしょう。

だから、行動しなかった人を責めるつもりはまったくありません。

ただ、「誰かがやらなければ危ない」と感じたとき、その"誰か"になることをためらいたくない。

そう改めて思いました。

正常性バイアスは、誰にでも起こり得ます。

だからこそ、「本当に大丈夫だろうか?」と一度立ち止まって考えること。

そして、違和感を覚えたときには、周囲の目を気にするよりも安全を優先すること。

今日の出来事は、その大切さを改めて教えてくれた出来事でした。

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